この本は、「稲」という植物をすみからすみまであらゆる観点で調べつくした、まさに集大成です。
たった一つの生物について、これほどの内容を集約した本が世界にどれほどあるでしょうか。日本でなければ作れない、日本が世界に誇れる本の一つになるのではないかと思います。
葉、茎、節、花、根、目にみえない花芽、しべ、あらゆる肥料成分との関わり、土壌との繋がり、それらを時間軸、空間軸、ありとあらゆる関連性について、かかれてあります。
たった一つ「稲」という植物を、科学の目で徹底的に見つめた本なのです。
特に、現代の一般的な多収農法である、窒素施肥のV字理論や、秋落ち現象、花芽形成時期の肥料成分とのかかわりなどは、どの種類の花にも参考になることでした。また、これらの研究からみえてくる稲の営みは、人の心と、どこかしら重なってみえると感じました。
この本は、戦後食糧難を経験した日本人の「より沢山の米を作りたい」という思いが結晶したように思います。敗戦した日本が、国力をあげて米の多収を研究したのです。
化学肥料や農機具の発達も合わせて、一反あたりの収量は飛躍的に伸びました。戦後の思いは今この本に実っています。
しかし、その本を手に取る私の周りでは、コンビニで毎日弁当が大量に捨てられ、沢山の田が分譲地に変わり、農家には跡継ぎがなく、夏は暑くなり、少子化が進んでいます。。。
でも、私自身は、家族を得て、幸せに平和に暮らしています。「やっぱりなにかやらなくちゃ。」と思わされました。
ほんの100年前、日本人の90%は農民でした。今の日本人の中で、農民を祖先に一度も持たない人はほんの一握りの特殊な血筋の人たちでしょう。
その私たちの祖先は、毎年毎年、どれほどの思いをこめて稲を作っていたでしょうか。
冷害で、水害で、旱魃で、戦争で、飢え、家族をなくしたり、娘を売ったり。。。。
だからこそ、豊作の秋の喜びはいかほどだったでしょう。
「もっと米が取れれば。。。」
稲という植物の周りでどれほどの思いを抱えて日本人は暮らしたでしょうか。
文字には残っていない、遠い過去からの途方もなく沢山の思いが、この本に届いているように感じます。
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